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「ほぼ日」の株式上場は、自らを縛る足かせになるかもしれない理由

こんにちは、ヒロタカです。僕が糸井重里氏を初めて知ったのは、誕生日にSFCのゲームソフト「Mother2」を親に買ってもらったときだと思います。

 

 

独特の世界観で夢中で攻略したのを覚えています。ムーンサイドは本当に怖かった。けど、一番怖かったのは停電した後のデパートでした。まだレベルも低いときだったので不安で不安でしょうがなかったのを今でも覚えています。そんな「mother2」の監修をされていたのが糸井重里氏でした。当時は有名なゲームクリエイターなのかな、と思っていましたがまさかコピーライターだったとは知りませんでした。ジブリ映画のキャッチコピーも多く手がけてきていて、僕がいちばん好きな紅の豚の「カッコイイとは、こういうことさ。」も糸井重里氏によるものです。

 

そんな糸井重里氏が設立した事務所が、「株式会社ほぼ日(ほぼにち)」として今月の16日に東京証券取引所のジャスダック市場に株式上場を果たすことになりました。公募は25万株、売出は15万株と全体株数225万株の約18%になります。3月の上場としては、ラーメン店の一風堂(力の源HD)と同じくらい話題になっています。糸井氏は個人事務所から脱却し、チームとして、企業として会社を運営していきたい、株の売却資金はそのための原資として活用したいと言っています。ただ、僕は今回の上場は「株式会社ほぼ日」の会社方針とは真っ向から反するのではないかと懸念します。

 

糸井重里とほぼ日ファンと投資家のズレ

 

――上場すると株価が付くようになります。株価というものをどう理解されていますか。

 「オリンピックの選手は記録を少しでもよくしようとするものですが、株価にも似たようなところがあるのかもしれませんね。数字には物神性がありますよね。ただ、そこにとらわれてばかりだと、(会社を経営するうえで)できることもできなくなっちゃう気がする。僕が株価のマジックにかかるか、かからないかというのも自分としても昔からの課題ですよ」

ほぼ日・糸井重里社長「やさしく、つよく、おもしろく」 :日本経済新聞

 

ほぼ日の由来は、糸井氏が1998年6月に開設したWEBサイト「ほぼ日刊糸井新聞」の略称「ほぼ日」から来ています。「ほぼ日」は、あの有名な「ほぼ日手帳」の製作元です。上場する「株式会社ほぼ日」の事業内容も「インターネットを利用したコンテンツ提供及び商品の企画・販売」となっています。現状の主力商品は「ほぼ日手帳」で、売上高37億6,000万円(2015年9月~2016年8月)の内、七割を「ほぼ日手帳」で占めています。

 

糸井氏は、自分の引退のことを考えています。今回の上場に関しても「人がほしい」とコメントしていて、上場目的にしても、「既存サービスとは異なるコンセプトの新規事業立ち上げに必要な人件費」と上場の目的に記載しています。これは明らかに今までのほぼ日からの脱却(糸井氏なき後のほぼ日)、もしくは成長を狙っています。

 

ほぼ日ファンは、糸井重里氏のファンと理解してもいいでしょう。糸井重里氏あっての「ほぼ日」であるとすれば、糸井氏が関わっていないプロダクトにどれだけのファンがついてくるのでしょうか。

 

投資家は、全部が全部ほぼ日のファンということはありません。いえ殆どはファンではないでしょう。上場するということは様々な見方をする投資家を相手にしなければならないと言うことです。糸井重里が株を買ってほしいのは「(ほぼ日という)会社が『健康』に成長することに目を配ってくれる株主」と言っています。企業を応援する目的で株を買う人はいるでしょう。ですが、企業は株主に対して、株主から預かった資金を利用し企業を持続的に発展させていく責任があり、大半の株主はそれを求めます。


上場する必要はあったのだろうか?

 

――今後、ほぼ日にとって株主とはどのような存在になっていくのでしょうか。

「僕は『ファミリー株式市場』を狙っているのかもしれない。兜町で株価を見ているのは専らおじいさんだ。でもおばあさんも家にいて、お母さんとお父さんがどうするあの株と言っていて、子どもが僕はマクドナルド株がほしいという会話があってもいいし、それが家族だ。ファミリー株式市場、大好きです」

ほぼ日・糸井重里社長「やさしく、つよく、おもしろく」 :日本経済新聞

 

 

ファンやチームのために資金を集めるのだったら、上場などせず別の方法で資金調達をすればよかったと僕は思う。上場するということは、市場に評価されてしまうということだ。大半の投資家は企業の成長、つまり株価の上昇や配当金の増配を求めます。

 

糸井氏や「ほぼ日」が、どれだけファンに寄り添う形で会社を運営していったとしても、上場すればROEやPERで他の企業と比較されます。株価には現れない企業の成長があったとして、それを喜ぶのは一部のファン層だけになってしまうでしょう。糸井氏は、ほぼ日の成長を喜んでくれる、いわゆるファン層の応援を期待してるフシが見えますが、それは株主に対する企業のスタンスではないでしょう。

 

ただ、これは一つの挑戦でもあります。純粋なファンとして、糸井重里氏のつくった「ほぼ日」の(株価には現れないかもしれない)成長を喜べる、そのために自分のお金を投資できる層がどれだけいるのか。クラウドファンディングやVCなどの台頭によって上場の価値が薄れてきている現在、「ほぼ日」のような企業が市場に受け入れられるのかは今後の市場の広がりの試金石になるのかもしれません。

 

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